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弱者に寄り添う小説~寺地はるなの作品を読む 

気に入った作家さんの本は、過去の作品を一通り読み、新刊が出たらチェックしているのですが、このごろ自分の好きな作家さんの新刊が出ないなあ、と思っていました。

そんなある日、オーディブルでおすすめに出てきた「川のほとりに立つ者は」を聞いてみました。

カフェの店長をしている清瀬は、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないという連絡を受けます。
清瀬と松木は、もめていて連絡を取らなくなっていた矢先のことでした。
松木の怪我の原因は何だったのか。
2人のもめ事の原因となった松木の秘密は?

清瀬の視点の章と、松木の視点の章が、audibleではそれぞれ女性と男性のナレーターが担当していて、わかりやすかったです。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、自分もいっぱいいっぱいでありながら、学習や日常の生活に困難を抱える登場人物たたちへの対応に最初は困りながらも徐々に理解していく清瀬に好感が持てました。

読んでいる途中はこれからどうなるんだろう、と思う場面もありますが、最後にはほっこりした気持ちになれる小説でした。



こんな作家さんをこれまでフォローしていなかったのは不覚、というわけで、他の本も読み始めました。
(この2冊はaudibleではなく単行本で読了)

 

「タイムマシンに乗れないぼくら」は短編集。読んでいてふと、過去のちょっとした出来事が思い出されたりしました。
「ガラスの海を渡る舟」ガラス工房を営む兄妹の物語。発達障害の兄「道」と、兄のために苦労してきた妹「羽衣子」のそれぞれの物語。
寺地はるなさんの小説は弱者や生きづらさを感じながら生きている人たちへの優しい視点が貫かれているのがいいですね。

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【コミック】「作りたい女と食べたい女」1~3 

「作りたい女と食べたい女」が、kindle本期間限定(ゴールデンウイークセール12日まで)50%引きになっていたので購入。
1巻から3巻まで一気読みしてしまいました。

料理を作るのは好きだけれど、小食の野本さん。一人暮らしなので作りたい、という欲求を満たせません。
お隣のお隣に住む春日さんは、定食屋で「ごはんの量少な目にしときましたよ!」と言われて、「普通についでください」と。
その食べっぷりは見事です。

ある日、料理を作り過ぎた野本さんが、春日さんに食べてもらうことを思いつき、誘ってからの2人の日常が描かれます。

料理を作って食べるだけの漫画かと思って読んでいたら、3巻あたりから二人の関係性が描かれるようになります。
3巻では、他に家族との関係で「食べられない人」や「料理を作らない人」も登場し、物語に深みを加えていきます。

読んでいてつらくなるような場面がある章の前には、注意書きもあり、読者への配慮があるコミックなんて初めてなので驚きました。その文面のなかに「マイクロアグレッション」という言葉も登場したのも、驚きです。

ドラマ化されていたのは知っていたけれど、観ていませんでした。
どんなドラマだったんだろう。再放送とかしないのかな。



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「ピンクとブルーに分けない育児」とは? 

「ピンクとブルーに分けない育児――ジェンダー・クリエイティブな子育ての記録」を読みました。

著者のカイル・マイヤーズは、自分の赤ちゃんを、ジェンダーにとらわれずに育てようと決めて、それを実践しました。
赤ちゃんを外性器によってジェンダーを決めずに、つまり「男の子」あるいは「女の子」として扱わずに、好きな色、好きなキャラクター、好きなおもちゃを自分で選ぶようにさせたのです。

子どもの性別を知りたがる通りすがりの大人たちとの攻防。
夫婦それぞれの両親にジェンダー・クリエイティブな子育てをすることを決めたことを知らせる前のためらいや戸惑い。

プールでのアクティビティのチラシで「女児には人魚のしっぽ、男児にはサメのひれを付けます」というのを見て、がっかりしたり、幼児向けの陸上競技大会で、男女別に走らせると知り、参加を断念したことも。

いろんなことに出会いますが、カイルと夫のブレントは、ズーマーと名付けた子どもとともに様々な苦労を乗り越えていきます。

男の子だから、女の子だから、と可能性を狭められることなく、生きること。
そのための障害がたくさんあることを認識させられます。

英語圏では代名詞があるので、赤ちゃんの性別がわからないと会話が困る、というのがネックになります。
heでもなくsheでもなく代わりに「they/them」で表現することに、ズーマーの周囲の人たちは慣れていくのです。
日本語は、必ずしもジェンダーを意識した代名詞を使わなくても会話が成り立つので、英語圏よりもジェンダー・クリエイティブな子育てはしやすいのかも、と思ってしまいました。

最近は履歴書の性別欄をなくそう、という動きもあります。
アンケートに性別欄は要らないのでは?と提案することもあります。
「男・女・その他」というアンケート欄を見かけることもあり、がっかりしてしまいます。「男・女・回答しない」という選択肢ならまだしも「その他」という選択肢を選ぶ人の気持ちを考えないのかな、と思ってしまいます。
ジェンダーについて考える人がもっと増えるように、カイルのような取り組みを知らせることは有意義だと感じました。




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外国ルーツの人は「日本語上手だね」と言われてどう感じるか 

「『ハーフ』ってなんだろう?: あなたと考えたいイメージと現実 (中学生の質問箱) 」という本を読みました。

「ハーフ」や「ミックス」というテーマについて研究している下地ローレンス吉孝さんが書いた本です。
中学生向け、ということですが、読み応えのある本でした。中学生だけではなく、多くの人に読んでほしいと思います。

生活の中で直面するさまざまな問題を、自己責任論としてとらえた場合、問題の原因は「自分」にある。
一方、社会構造としてとらえる場合、問題の原因は「社会」にある、というところから本書は始まります

海外にルーツをもつことに起因するさまざまな問題は、当事者以外にとっては、悪意のないものであっても、当事者にとっては、「マイクロアグレッション」となるということ。

たとえば、日本語ネイティブなのに、「上手ですね」と言われたら、イラっとする。
1日1回言われたとしても、それが毎日となると、「あなたは日本人ではない」というメッセージを受け続け、精神的な負担になるのです。

肌の色や髪の質のために、学校でいじめを受けたり、就職で差別されたり、いろいろなことが起きています。
1人1人違うけれど、みんな同じ人間、ということを許容できない日本という国。さまざまなルーツのある人々の「人権」について、無関心だったり、無神経な人々も多い。
本書を読むことで、外見で人を判断しプライバシーにかかわることを好奇心で尋ねることが、相手にダメージを与えていることに気づく人が増えることを願います。自戒を込めて。




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定点観測の重要性について学ぶ「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」 

前に、Audibleにはまっている話を書きました。
その後も、通勤時間や家事をしながら、Audibleを聴き続けています。
慣れてくると1.8倍速~2倍速程度で聴くのがちょうどよい感じで、数日で1冊聴き終わるペース。
活字の本は、平日はあまり読めず週末に時間を取って読むことが多いので、Audibleの耳で聴く読書のほうが、どんどん進んでいる感じ。

主に聞いているのは、社会科学関係の本や、ノンフィクションなどです。

最近聴き終えたうちの1冊がこれ、「嫌われた監督」です。

野球はあまり興味がなく、プロ野球に関する知識はほとんどないのですが、この本は興味深く聴くことができました。
ここぞという場面で、通常ならこういうことはしないだろう、という選択をする落合監督。
選手やコーチなど一人ひとりの球団メンバーの目線で落合監督について語る中で、その理由が徐々に明らかになっていきます。

球団の目的は何か。
勝利すること。
選手個人にとって大事なのは何か。
怪我をせずにプレーを続けること。

新聞記者の著者に対し、落合監督は、「1人か?1人なら話す」と胸の内を明かします。
落合監督と関わることで、選手だけでなく著者もジャーナリストとして成長したのでしょう。

私のような野球音痴の人でも楽しめる1冊でした。

  

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さて、この本を読んだきっかけは、下記の本で紹介されていたからです。
定点観測の重要性について深く学びたいのであれば、この本が参考文献としてオススメ、とありました。
確かに、他の人たちには見えていなかったけれど、監督だけが見ていたものの価値について知ることができました。



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