弱者に寄り添う小説~寺地はるなの作品を読む
気に入った作家さんの本は、過去の作品を一通り読み、新刊が出たらチェックしているのですが、このごろ自分の好きな作家さんの新刊が出ないなあ、と思っていました。
そんなある日、オーディブルでおすすめに出てきた「川のほとりに立つ者は」を聞いてみました。
カフェの店長をしている清瀬は、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないという連絡を受けます。
清瀬と松木は、もめていて連絡を取らなくなっていた矢先のことでした。
松木の怪我の原因は何だったのか。
2人のもめ事の原因となった松木の秘密は?
清瀬の視点の章と、松木の視点の章が、audibleではそれぞれ女性と男性のナレーターが担当していて、わかりやすかったです。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、自分もいっぱいいっぱいでありながら、学習や日常の生活に困難を抱える登場人物たたちへの対応に最初は困りながらも徐々に理解していく清瀬に好感が持てました。
読んでいる途中はこれからどうなるんだろう、と思う場面もありますが、最後にはほっこりした気持ちになれる小説でした。
こんな作家さんをこれまでフォローしていなかったのは不覚、というわけで、他の本も読み始めました。
(この2冊はaudibleではなく単行本で読了)
「タイムマシンに乗れないぼくら」は短編集。読んでいてふと、過去のちょっとした出来事が思い出されたりしました。
「ガラスの海を渡る舟」ガラス工房を営む兄妹の物語。発達障害の兄「道」と、兄のために苦労してきた妹「羽衣子」のそれぞれの物語。
寺地はるなさんの小説は弱者や生きづらさを感じながら生きている人たちへの優しい視点が貫かれているのがいいですね。
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- [2023/05/14 19:58]
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ドラマ化された「三千円の使いかた」を読む
「三千円の使いかた」をドラマ化をきっかけに読んでみた。
就職して憧れの一人暮らしを満喫する美帆。
結婚前は証券会社に勤めていて今は主婦をしている姉の真帆。
2人の母のとも子は、手術をきっかけに夫との距離を感じる。
祖母の琴子は73歳にして就活を始める。
女性たちとそのパートナーとの関係もそれぞれであり、
友人たちとの金銭感覚の違いもまた心をざわつかせる。
ドラマの第1話も観たが、原作とは少し違うところもあり、こちらもまた今後が楽しみ。
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- [2023/01/08 12:21]
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「同志少女よ、敵を撃て」(逢坂冬馬)
ようやく「同志少女よ、敵を撃て」を読みました。
1942年、ドイツ兵に母を殺され、村中の人を虐殺されたとき、セラフィマは18歳だった。
村を離れ、外交官になる夢をかなえるため大学に行くはずだったセラフィマは、母に教えられた狩猟の腕前を生かし、狙撃兵になる。
教官のイリーナによる訓練に耐えたセラフィマと仲間たちは、戦場へと向かう。
独ソ戦の最中に、狙撃兵として選ばれた少女たち。
「戦いたいか?死にたいか?」の問いの答えは同じだったが、「何のためにたたかうか」の答えはそれぞれ違っていた。
迫真的な戦場の描写、少女たちの心情、そして思いもよらぬ展開に驚かされた。
こんな物語がデビュー作とは、なんとすごい作家なんだろう。
kindle版は期間限定セール中で50%引きで購入できます。
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- [2022/12/20 20:00]
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犬好きの人におすすめの小説「シャルロットのアルバイト」
久しぶりに近藤史恵の小説を読みました。
「シャルロットのアルバイト」は、警察犬を引退したジャーマンシェパードのシャルロットとその飼い主の夫婦が出会った日常の謎系のミステリ短編小説集。
お利口なシャルロットは、夫婦が忙しくてもじっと我慢。夜中に散歩に連れてってもらうことを楽しみに待っています。
お向かいの家に引っ越してきたのは男の子?それとも女の子?
シャルロットがアルバイトを頼まれたドッグスクールの悪い噂の真相は?
預かることになった子犬の顛末、など。
悪い人、も出てくるけれど、殺人事件は起きないので、怖いミステリが苦手が方も安心して読めます。
未読の方はこちらもどうぞ。
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- [2022/11/27 16:28]
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「老神介護」(劉 慈欣)
ベストセラーになった「三体」はまだ読んでいないのですが、劉 慈欣の「老神介護」を読みました。
5編の短編、中編の作品集です。
最初の2編は連作。
表題にもなっている「老神介護」は、宇宙船から降りたった老人の姿をした神たちを、地球人が養うことになります。
それぞれの家庭で一人ずつ。しかしその負担に耐えられなくなったころ・・・
「扶養人類」はその3年後。
プロの殺し屋が登場します。
他にもアリと恐竜が協力して文明を作り上げた世界や、「眼」を連れて休暇の旅行に出かける「僕」の体験など。
若いころ、あまりSFを読みませんでしたが、この頃、SFも面白いなあ、と。
当時は、科学が発展すると、SFはどうなるのかな?と思っていましたが、新しい科学技術とともにSFもまた進化するものなのですね。
同時発売のこちらは未読。
「老神介護」を読んでいた思い出したのが、石坂啓の「安穏族」です。
その中の「その後のE.T.」という作品で、幼い少年の家に、田舎から今でいう認知症の祖父がやってきます。
少年には、祖父の話していることや祖父の故郷の様子がまるで異世界のようで、祖父のことをET=宇宙人と認識します。
祖父が亡くなるとき、少年は悲しみますが、おじいちゃんは、「大丈夫、君が大人になるころには、仲間をたくさん連れてやってくるから寂しくないよ」と慰めるのです。ラストには、たくさんの老人が乗った宇宙船の絵が・・・。
「安穏族」はこのほかにも時代を鋭くとらえる作品がいくつもあり、忘れられません。
もう数十年前に描かれたコミックですが、名作なので、復刊してほしいなあ。
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- [2022/11/06 15:35]
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