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「雲の王」川端裕人 

川端裕人「雲の王」を読みました。

小学生の息子を育てながら、気象台で働く美春は、雨が匂いでわかるという特殊な能力を持っていた。
行方不明だった兄に呼び出された場所で出会ったのは、美春と同じように不思議な能力を持つ一族。
大規模な気象災害を予測し、その被害から人々を救うために、美春たちの能力は生かせるのか?

気象庁で行なっている、観測用気球で気圧や温度の変化を調べる仕事の様子を描いたり、台風を科学の力で制御しようというアイデアや取り組みを描写する科学小説としての側面と、不思議な能力をもった一族というファンタジー要素の2つが、見事に融合した作品。科学小説とファンタジーの、どちらか片方が突出してもついていけない感じですが、バランスよく療法楽しめる、川端裕人にしか書けない小説でした。

雲の王雲の王
川端 裕人

集英社 2012-07-05
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「算数宇宙の冒険」川端裕人 

川端裕人「算数宇宙の冒険」を読みました。

東京郊外の桃山町は、不思議な町。そこに住む小学6年生の千葉空良と河邑ユーキ、紺野アランは、3人で町の神秘を探す。そこへ数学が得意な転校生が登場し、4人で「算数宇宙杯」に出場することになり、特訓が始まる・・・。
素数の性質、ゼータ関数、そして「リーマン予想」と物語の舞台は、数学の世界へ。

数式が登場しますが、「鑑賞するだけでいい」という主人公へのアドバイスどおりに、そのまま読み飛ばしてストーリーだけ楽しみました。
少年少女が出てくる冒険小説、というよりは、後半はしっかりSFなのでした。

440853563X算数宇宙の冒険
実業之日本社 2009-11-20

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「桜川ピクニック」 川端裕人 

川端裕人は好きな作家のひとり。文庫化されたものはたいてい読んでいる。
「みんな一緒にバギーに乗って」で、男性保育士からみた子育ての現状を描いた著者が、今度は、お父さんの側から見た子育てを描いたのが、「桜川ピクニック」。

6つの連作短編からなるが、どの家庭も子どもは保育所に行っており、母親よりも父親がメインで子育てを行っているようだ。

「青のウルトラマン」では、虐待の記憶を持つ恵が、虐待の現場を目撃してからおかしくなってしまう様子を描く。「前線」では、紛争地帯でのカメラマンの仕事をしていたが、育児休暇をとっている慎二が主人公。電車の中の女子高生との出会いから、自分を見つめなおす。
「うんてんしんとだっこひめ」は、まもなく弟か妹が生まれる状況の子どもをめぐって。
「夜明け前」は、保育所のお父さんたちが交流会と称して飲み会を行い、日頃のストレスを解消しようとするが・・・。
「おしり関係」では、男女の体の違いに興味を持った娘にふりまわされる恵が、自分の痔瘻の手術もありさらに事情は複雑になる。
最後の「親水公園ピクニック」はこれまでの登場人物が総出でピクニックの場で交流する。

お父さん側から見ると、「育児」もまた違う見方ができるのだなあ、という新鮮な感じと、育児に大きくかかわることについては、やはりどのお父さんたちも心のどこかに抵抗を感じながらやっているのだろうな、これまでの性別役割分業に縛られているところから、解放されるのは簡単ではないのかな、などと思いながら読んだ。

育児中のお父さんたちやこれから子育てをするだろう男性におすすめの本。

「みんな一緒にバギーに乗って」と同じ登場人物も出ているようで、こちらも再読したくなった。

桜川ピクニック桜川ピクニック
川端 裕人


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「みんな一緒にバギーに乗って」 

新刊が出れば、必ず買ってしまう作家というのは、誰でもあるのだろうが、私の場合、川端裕人はそのひとりだ。

「みんな一緒にバギーに乗って」は、保育所が舞台で、主人公は新人保育士の田村竜太。こういう小説ってこれまでなかったような気がする。私も保育所には、長い間お世話になったので、なつかしく思いながら読ませてもらった。

やたら子どもあしらいがうまい不審者(?)と散歩中に出会ったり、「コロチュ(殺す)」と口にする子どもの謎、子どもたちの遊びの中からうまれた「ハチオオカミ」というオリジナルのキャラクターなど、いろんなエピソードが登場し、どの話も読ませる。

男性保育士ならではの悩みも興味深く読んだ。若いころは「おにいさん」のような役割でいいが、その後、「おとうさん」の代わりにはなれない。では、どうしたらいいのか。先輩の女性保育士と同じ保育ではなく自分ならではの保育、というのはどういうものなのか・・・。
また、男性保育士ということで、不安に思う父母と対決したり、職業が保育士であるために、彼女の父親に結婚を反対されたり、といろんな苦労があるのだ。

連作短編なので、もう一人の新人男性保育士や、女性の新人やベテランの保育士の視点からえがかれた章もある。

保育所民営化の話や、保育士の給与が安いこと、など、現在の保育をめぐる問題点にも着目している点が、この小説の価値を高めていると思う。

同じ著者の「ふにゅう」も間もなく文庫化されるとのこと。こちらも早く読みたい。

みんな一緒にバギーに乗って (光文社文庫 か 46-1)みんな一緒にバギーに乗って (光文社文庫 か 46-1)
川端 裕人


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この本に出てくる元気せんせいが、めざしているのは、絵本「ダンプえんちょうやっつけた」に出てくるような保育園なのだろうか。この絵本の紹介は、また今度。
ダンプえんちょうやっつけた (絵本ぼくたちこどもだ 2)ダンプえんちょうやっつけた (絵本ぼくたちこどもだ 2)
古田 足日

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「かぐや」打ち上げの日に・・・川端 裕人「夏のロケット」 

今日(9月14日)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が、月周回衛星「かぐや」を搭載したH2Aロケット13号機の打ち上げに成功した。米アポロ計画が約40年前に始まって以来、最大の月探査計画が始動したということだ。今回の打ち上げ業務は、初の民間企業によるものだという。

「川の名前」で川端裕人にはまった私が2冊目に選んだのが「夏のロケット」。きのう読み終えたばっかりのところに、今日のこのニュースだったので、偶然にとてもびっくりしている。

「夏のロケット」は、火星に憧れてロケット打ち上げに取り組んだ高校生たちのその後の冒険を、ミサイル爆発事件の謎解きとからめて描いた青春小説。

高校生時代に天文部で自作ロケットの打ち上げ実験を繰り返し、自分たちで火星に行く夢を持っていた5人は、卒業後、それぞれ別の進路に進む。やがて、それぞれの生き方が、ロケット打ち上げという目的に向け一つに集約されていく。警察に追われながらも打ち上げを成功させようと必死になる姿に、読者は、応援しながら読み進めることになる。

自分たちで火星に行くだけでなく、ビジネスとして成り立たせるにはどうしたらいいか、コストをできるだけ下げるにはどうするか、などを真剣に検討する彼ら。
ハイテク産業ではなく、町工場や刀鍛冶の職人の力を借りて、ロケットの試作品を作っていく。

すでに何人もの日本人が宇宙飛行士になり、宇宙に行くことが荒唐無稽な夢ではなくなった現代。今どきの子どもたちは、宇宙に行きたいと夢みることがあるのだろうか。
夢を忘れないでという著者からのメッセージ・・・若い人たちにも、ぜひ読んでほしい1冊だ。

4167662019夏のロケット (文春文庫)
文藝春秋 2002-05

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