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当事者から見た認知症の世界「誤作動する脳」(樋口直美) 

認知症の当事者から見た世界は、どんな世界なのだろう?
この本は、レビー小体型認知症と診断された女性が「認知症」の人の頭の中で何が起きているか、そしてどんなことを感じているかを描いた貴重な1冊。

「レビー小体型認知症」の症状として、小動物などの幻視が見える、というのは知識として知っていたが、幻視が実際にどういうものかはこの本を読んでよくわかった。
遠野物語の座敷童子(ざしきわらし)もこれかもしれない、というのは斬新な発想。座敷童子=福の神であり、富と名声をもたらす、というのは、不思議な言い伝えがある。もしかしたら、認知症の人を大切にするような家は繁栄する、ということなのかもしれない。

幻視以外にも様々な症状が出現する。
たとえば、嗅覚障害。著者は、わりと早い段階で嗅覚を失ったのだそう。
「幸せな感じ」や「幸せな記憶」が嗅覚と結びついていることが多く、嗅覚を失ったことは、「哀しい」感じがするのだろう。
これは目が見えない人が絵画について「聞く」ときや、耳が聞こえない人が音楽について読むときと同じ感覚かもしれない。

「時間の感覚」がなくなるということ。
今が何月か、とか、何日前のことか、などがわからなくなる。
ある出来事を思い出した時、いつのことなのかが明確にはわからない。
人の頭の中に時間という一本の長いロープがあり、過去から現在、そして未来、という時間を手繰り寄せることができるとしたら、そのロープが頭の中にない、という。
それでも「今」だけは唯一実感でき、把握できる。

それ以前は、うつ病と誤診され、薬の副作用で苦しんだりしていたが、診断後は、当事者として「認知症」の症状について観察して記録している。

発症してすぐのときは、「うつ病」と誤診され、薬も合わなくてかなり苦労されたという。
医師は薬を出すしかすることがないので、やむを得ないという理解もされているが、つらかっただろう。
今は薬を飲むことや、ストレスを減らすこと、いろいろな工夫で日常生活を送ったり、講演をしたり、文章を書いたりしている著者。
本当に貴重な記録だ。



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レビー小体型認知症について、もっと詳しく知りたい方はこちらが参考になります。↓

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「特別展ミイラ」 

先日、上野の国立科学博物館で開催中の「特別展 ミイラ」を観に行ってきました。

世界各国のミイラが集められていました。
それぞれのコーナーに、短時間の映像での解説があり、理解を深めてくれます。
音声ガイドは、大沢たかお。
解説の小さな文字を読まなくて済むので、音声ガイドは便利です。

今回、わざわざミイラ展を見に行こうと思ったのは、ミイラのCT画像の撮影と3D構築に関わった方から直接話を聞く機会があったからです。
ミイラの体内がどうなっているか、CT画像により調査し、その結果は今回のミイラ展でも紹介されていました。南米のミイラを貸し出してもらうことができたのも、日本で科学的な調査を行うことができるから、という話でした。
また日本のミイラとして、即身仏も展示されること、即身仏もCTで調査したことなども話を伺いました。
「本草学者」のミイラは、薬学の研究の末、自ら腐敗防止のために「柿の種子」を飲みこんだこと、なども明らかにされたそうです。

ミイラ展では、世界各国の死生観、そしてミイラのいろいろな作り方を学ぶことができ、猫のミイラも見ることができました。


参考書籍、いくつか載せておきます。

カラー版 世界のミイラ (宝島社新書)

宝島社
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教養としてのミイラ図鑑: 世界一奇妙な「永遠の命」
ミイラ学プロジェクト
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日本の即身仏について詳しいのはこちら。
なお、ミイラ展での即身仏の展示は一体(福島県にある貫秀寺に安置されている≪弘智法印 宥貞≫)でした。

新編 日本のミイラ仏をたずねて
土方 正志
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「やさしい日本語」で観光客を迎えよう~インバウンドの新しい風~ 

「『やさしい日本語』で観光客を迎えよう~インバウンドの新しい風~」を読みました。

日本に来た観光客に、もっと日本語で話しかけてみよう、という本。
外国人だから、英語で話さなくてはならない、ということはないのですね。
そもそも外国人がみな英語を母国語とするわけでもないし、日本に来る観光客は日本に興味があってきているわけだから、多少の日本語は勉強してきている人たちもいるのです。

彼らに話しかけるには、「やさしい日本語」が必要。
やさしい日本語のコツは「ハ・サ・ミ」。っきりと、いごまで、じかい文で話す、という最低限のコツの頭文字です。

単語を選ぶときは、「和語」を選ぶ。このほうがやさしいのだそうです。
語尾ははっきりと。むずかしい敬語はつかわずに「です・ます」で話します。

以前、日本語学校の教師の方が書いた本を読んだときに、生徒に求められて通訳として立ち会うときに、生徒の国のことばではなく、日本語で言い換えてあげる、という話を読んだのを思いだしました。これが「やさしい日本語」だったのですね。

「やさしい日本語」に言い換えた例
 「おひとつ」⇒「1個」
 「何名様ですか?」⇒「何人ですか?」
 「お選びいただけます」⇒「選べます」 
 「~でございます」⇒「~です」
 「ございます」⇒「ないです」
 「お待ちください」⇒「待ってください」など。

なるほど~。

私の職場には観光客は来ませんが、たまに外国の方の対応を求められることがあります。
日本語が少しわかる、という方に対して、ついいつものように敬語を使って話していますが、分かってもらえない可能性があるということですね。
この本にあるような「やさしい日本語」をもっとみんなで学んでいけたらなあと思いました。

「やさしい日本語」で観光客を迎えよう—インバウンドの新しい風
加藤 好崇
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「ある世捨て人の物語: 誰にも知られず森で27年間暮らした男 」 

「ある世捨て人の物語: 誰にも知られず森で27年間暮らした男 」を読みました。

20歳で家を出てから27年間、森の中で暮らした男、クリストファー・ナイトについて、取材をして書かれた本です。
寒い冬をどう過ごしたのか?食べ物はどうしたのか?などの疑問を調べていきます。
食料は、近隣の100軒の別荘地から盗んで暮らしていたので、発見されたのち1000件以上の窃盗の罪に問われます。

著者の興味は、人と会わずに生きるということがどういうことか、ということ。
世界中の「隠者」についての考察の中で、日本の「ひきこもり」についても言及されていました。

ナイトは、別荘に盗みに入るとき、食料だけでなく、本も盗んでいました。
拘置所に面会に来た著者に、好きな作家について語ります。
生きた人との会話はなくても、本の世界で、人間とつながっていたということなのでしょうか。
他人に興味を示さないナイトが、著者に対し一つだけ興味を示して依頼したのは、書棚にどんな本がならんでいるか、ビデオに撮って送ってくれ、ということでした。

興味深かったのは、人間と接しなければ病気にかからない、という話。
ただし、甘い物好き、という嗜好から虫歯だけは防げなかったようです。




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「医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード」 

アトゥール・ガワンデ著「医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード」を読みました。

著者はインド系アメリカ人の外科医。公衆衛生の分野でも活躍している。
第1部「勤勉さ」では、院内感染の問題、ポリオ撲滅のための掃討作戦、戦場での戦傷外科医たちの活躍が取り上げられている。
第2部「正しく行う」では、異性の診察に立ち合いが必要か(国によって考えが異なる)、医療裁判(医師出身の弁護士の立場)、医師の給料、そして死刑執行室の医師、延命治療など、倫理的な問題も含めて様々な考えが提示される。
第3部「工夫」は、「アプガースコア」により新生児医療が大きく進歩したこと、病院の評価について、あきらめないこと、が描かれる。

医学の歴史と、倫理や科学を、ストーリーを交えて語っているので、読んでいて面白い。
いろんな考え方が紹介されているので、医療系の大学を目指す人は小論文対策にもなるのでは。

一番印象に残ったのは、「ポジティブな逸脱」という言葉。
子どもの栄養失調を援助するプログラムの報告によると、外部から解決法を持ち込んでも成功しない。たとえば、栄養失調の子どもの住む村に行って、外部の者が栄養価の高い食物の入手法、などをいくら教えても、村の親たちは変わらない。これを、方向を変え、貧しい村の人々を集め、どの親の子どもが一番、栄養が行き届いているかを教えてもらう。そのような親を正常からの「ポジティブな逸脱」と呼び、その子どもの母親の家を訪ねて、どのような食べさせ方をしているか、見てもらうようにした、というのである。
その家の母親は、村人からみて常識外れのこと(たとえば下痢しているときにも食べさせる、とかご飯にサツマイモの葉を添える、など)をしていた。このやり方が徐々に広まると栄養状態が改善した、という話。
「このようにせよ」と命じるのではなく、相手がすでに持っている能力の上に積み上げていく、というアイデアである。
これを院内感染対策のためのアプローチに取り入れてみたら、さまざまなアイディアが湧き出てきた、とのこと。
自分の職場など、いろんな場面で使えるかもしれない。
たとえば、残業を減らすために、仕事を効率よくするアイディアをみんなで共有するとか。

医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード
アトゥール・ガワンデ 原井 宏明

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同じ著者による「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】」もおすすめ。
医療系以外の人にも役立つ。
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
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