「医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード」 

アトゥール・ガワンデ著「医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード」を読みました。

著者はインド系アメリカ人の外科医。公衆衛生の分野でも活躍している。
第1部「勤勉さ」では、院内感染の問題、ポリオ撲滅のための掃討作戦、戦場での戦傷外科医たちの活躍が取り上げられている。
第2部「正しく行う」では、異性の診察に立ち合いが必要か(国によって考えが異なる)、医療裁判(医師出身の弁護士の立場)、医師の給料、そして死刑執行室の医師、延命治療など、倫理的な問題も含めて様々な考えが提示される。
第3部「工夫」は、「アプガースコア」により新生児医療が大きく進歩したこと、病院の評価について、あきらめないこと、が描かれる。

医学の歴史と、倫理や科学を、ストーリーを交えて語っているので、読んでいて面白い。
いろんな考え方が紹介されているので、医療系の大学を目指す人は小論文対策にもなるのでは。

一番印象に残ったのは、「ポジティブな逸脱」という言葉。
子どもの栄養失調を援助するプログラムの報告によると、外部から解決法を持ち込んでも成功しない。たとえば、栄養失調の子どもの住む村に行って、外部の者が栄養価の高い食物の入手法、などをいくら教えても、村の親たちは変わらない。これを、方向を変え、貧しい村の人々を集め、どの親の子どもが一番、栄養が行き届いているかを教えてもらう。そのような親を正常からの「ポジティブな逸脱」と呼び、その子どもの母親の家を訪ねて、どのような食べさせ方をしているか、見てもらうようにした、というのである。
その家の母親は、村人からみて常識外れのこと(たとえば下痢しているときにも食べさせる、とかご飯にサツマイモの葉を添える、など)をしていた。このやり方が徐々に広まると栄養状態が改善した、という話。
「このようにせよ」と命じるのではなく、相手がすでに持っている能力の上に積み上げていく、というアイデアである。
これを院内感染対策のためのアプローチに取り入れてみたら、さまざまなアイディアが湧き出てきた、とのこと。
自分の職場など、いろんな場面で使えるかもしれない。
たとえば、残業を減らすために、仕事を効率よくするアイディアをみんなで共有するとか。

医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード医師は最善を尽くしているか――医療現場の常識を変えた11のエピソード
アトゥール・ガワンデ 原井 宏明

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同じ著者による「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】」もおすすめ。
医療系以外の人にも役立つ。
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
アトゥール ガワンデ 吉田 竜

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「町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト」 

「町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト」を読む。

塩漬けされ、東京ドーム2つ分にも相当する広大な駅前の空き地が、「オガールプロジェクト」によって、住民が集い、過ごす場所になった。企画を成功させたのは、紫波町出身の岡崎正信。東京で都市再開発事業の仕事をしたのちに、紫波町に戻る。
町づくりを民間の事業として成立させる、というアイディアに、町長も賛同し、岡崎は大学院で公民連携の手法を研究し始める。

「町長の役目というのはね、この辺の方言で『ぶっかれテープレコーダー』なんですよ」と、何度も同じことを語る藤原町長。トップがぶれない、というのは大事なことだという。

フットボールセンターの建設に手上げし、さらにはバレーボール専用体育館まで作ってしまう。ここには全国からバレーボール選手たちが合宿を行うようになり、利益も十分に出るようになった。
図書館では農業支援を高く掲げるなど、他とは違った取り組みをする。

オガールプロジェクトを進めるにあたっては、経営的に成り立つかどうかの視点も重視し、またワークショップを繰り返し住民の意見もよく聞いた。「何がほしいか?」とは聞かず、「どういうことをしたいのか?」と理念を共有することから始めたという。

会議だけではものごとが進まない。オガールプロジェクトの担当者は、「たとえば、図書館をつくるという時に、他県にある最先端の図書館に教育委員会の職員と一緒に行くわけです。お金がないから、車に乗って何時間もいろいろな話をしながら一緒に移動します。一緒に話を聞けば、理解も深まる。そうした共通体験ひとつひとつが共通言語になっていきました。」と語る。
熱く語り続ける人がいてこそ、実現したのだろう。

町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト
猪谷 千香

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「満月をきれいと僕は言えるぞ」(宮田 俊也 山元 加津子) 

「満月をきれいと僕は言えるぞ」を読みました。

重症の脳幹部出血で四肢麻痺、「植物状態」と宣告された「宮ぷー」こと宮田俊也さんは、「レッツ・チャット」という機器を使って意思疎通ができるようになります。それまでには、友人で絵本作家の山元加津子さんの「だいじょうぶ!」という楽観主義とけっしてあきらめない強い信念、そして愛情がありました。

自分の声で、自分の考えを伝えることができない「ロックト・イン・シンドローム」の人たちにとって、とても大切な意思伝達装置「レッツ・チャット」が生産中止になることを知ったあと、山元加津子さんたちは、署名活動を始め、多くの人の声を集め、会社を動かします。このあたりは、とても読み応えがありました。

レッツ・チャットで、一文字ずつ苦労してつづる宮ぷーの一言一言は、とても重いです。

満月をきれいと僕は言えるぞ満月をきれいと僕は言えるぞ
宮田 俊也 山元 加津子

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読みやすい文章なので、小学校高学年や中学生の読書感想文の題材にもいいかもしれませんね。


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手話で会話するゴリラ「ココ、お話しよう」 

「ココ、お話しよう」は、女性心理学者が、ゴリラに手話を教えたら、会話できるようになり、ともに生活した様子を描いたノンフィクションです。

ゴリラのココは、1000以上の言葉を覚え、会話をします。
プレゼントに子猫がほしい、といい、もらった子猫をかわいがる、という意外な話が印象に残っています。

「ゴリラは死んだらどこへ行くの?」なんていう哲学的な会話も。

ココ、お話しよう (自然誌選書)ココ、お話しよう (自然誌選書)
フランシーヌ パターソン ユージン リンデン Francine Patterson Eugene Linden 都守 淳夫

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実は絵本にもなっていたのですね。

ココ―ゴリラと子ネコの物語 (あかね・新えほんシリーズ)ココ―ゴリラと子ネコの物語 (あかね・新えほんシリーズ)
フランシーヌ・ペニー パターソン Ronald H. Cohn

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「自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心」 

「自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心」を読みました。

自閉症と診断され、日常会話にも苦労している東田直樹さん本人が、パソコンを利用することにより表現する力を身につけ、自閉症に関する質問に対する回答をパソコンを通して表現したもの。

自閉症の人の不思議な行動の意味がよくわかりました。
そして、周りから見ると困った行動も、本人は好きでやっているのではないこと。脳が勝手に命令していて、やめたいのにやめられない状況になっているのだそうです。
時間の感覚や、記憶がほかの人とは違っていること。
自分のために親が悲しむことがつらい、ということなどが表現されていて、外見からはわからない彼らのつらさや悲しさが伝わってきます。

「自閉症についてどう思いますか?」という質問に対し、答えた文章の中の「太古の昔からタイムスリップしてきたような人間なのです。」という一節が強く印象に残っています。

ぜひ多くの人に読んでほしい一冊です。
NHKの映像もあわせてどうぞ。

自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心
東田 直樹

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「続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡」は、高校生になった東田直樹さんが書いたもの。前作よりも多くの質問に対する答えがえがかれています。。

続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡
東田 直樹

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以前読んだ小説ですが、「くらやみの速さはどれくらい」もとても素敵な小説です。
近未来が舞台で、自閉症者のルウが主人公。彼は仕事も趣味も持って暮らしているけれど、脳手術で自閉症を治すことを勧められ・・・、というお話。21世紀の「アルジャーノン」に例えられることも多いようです。おすすめですよ~。

くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)
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