「再起」(ディック・フランシス) 

「好きな作家は?」と聞かれると、「ディック・フランシスとデズモンド・バグリィ」と答えていた時期がある。
フランシスの小説に出会ってから、冒険小説というジャンルの本を読み漁った。
たくさん読んだ中でもやっぱりディック・フランシスは、一番好きな作家の一人だ。

タイトルはすべて漢字2文字。どの作品でも主人公は男らしい男。職業はいろいろだが、必ず競馬が登場する。
「競馬シリーズ」というネーミングから、敬遠する人もいるかもしれないが、登場するのは、イギリスの競馬界。女王様の国の競馬は、英国上流階級の社交場という意味合いもあり、日本の競馬とはかなり違うものなのだ。

著者のディック・フランシス自身も、元障害競馬の騎手。「女王陛下の騎手」という自伝も書いている。
騎手を引退したのち、小説家としてデビュー。1年に1冊ずつ新作を発表して、私たち読者を楽しませてくれた。しかし、2000年に執筆の協力者である妻を亡くしてからは、しばらく新作がでなかったのだが、2006年に、この「再起」で作者も再起したのである。
「再起」で特記すべきことは、これまでの翻訳者菊池光氏の死去により、訳者が変わったことだ。新しい翻訳も、同じように素晴らしい。これまでのフランシスの作品と違和感なく読み進めることができた。

というわけで、作者ディック・フランシスへの思い入ればかり書いてしまったが、実は、「再起」の魅力は、主人公シッド・ハレーに尽きる。各作品で別々の主人公を設定するフランシスだが、シッド・ハレーともう一人キットだけは、複数の作品に登場する。それぞれ印象的な主人公の中でも、シッド・ハレーは特に魅力的だ。

怪我により騎手を引退し、調査員として働くシッド。いろんな困難や苦痛を乗り越えながらも、信頼される調査員として活躍し、今回も、悪役に痛めつけられても決して屈しない。「再起」では、本人を痛めつけても無駄、と知った犯人たちは、別の手段をとる。
(そういうプロット上、オランダ人女性との仲睦まじい様子の描写が必要なのだろうが、いつものフランシスならこんなシーンはなかったのでは?ストイックな主人公が魅力的だったのに・・・と思った。シッドのファンとして、妬いているだけかもしれないが)
携帯電話やインターネット・ギャンブルも登場し、80代を超えた作家が書いた作品とはとても思えない、わくわくする本だった。

再起 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-41) (ハヤカワ・ミステリ文庫)再起 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-41) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
北野寿美枝


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これから読む方は、「大穴」「利腕」「敵手」そしてこの「再起」と順をおって読んでほしい。
読書の醍醐味と充実感が得られると思う。
大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-2))大穴 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-2))
ディック・フランシス


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「武士道セブンティーン」 

対照的な2人の女子高生剣道部員の物語「武士道シックスティーン」の続編。
こちらもとっても面白かったです。

主人公の二人だけでなく、周りの人々もそれぞれ味があります。
今回は、磯山香織の中学時代の同級生の男子が登場。これがいじめられっ子で、磯山に守ってもらおうという魂胆をもっていたりします。
父と母の再婚で苗字が変った甲元早苗は、顧問の先生の横暴(?)で「河本」という名札を付けされられます。
早苗と同じ福岡南の部員の黒岩レナもまた独特。剣道をスポーツとしてしかととらえない彼女は、早苗や香織たちの剣道とは相いれないものをもっています。

いろんなエピソードが書き込まれる中、ラストに向かって盛り上がります。
一気に読ませてくれる1冊でした。

中学生や高校生の読書にもおすすめの本です。朝読書や通学の時に読めるように早く文庫化されるといいですね。

4163271902武士道セブンティーン
文藝春秋 2008-07

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未読の方は、こちらからどうぞ。
続けて読んだほうが面白いと思います。
4163261605武士道シックスティーン
文藝春秋 2007-07

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「容疑者Xの献身」 

「容疑者Xの献身」、映画がよかったので、原作も購入。

映画でトリックがわかってしまっているので、ミステリの読書としての楽しさは、半減。
でも、映画との違いなんかを楽しみながら読みました。

こういうラストでびっくり、というストーリーの場合、映画と小説、どちらを先に読むか問題になりますね。
今回は、どちらが先がよかったのかな?
読書を楽しむなら、小説が先のほうがよかったのかもしれませんね。

この本は、私が読み終わった後、娘が読み、今は息子が読んでます。

容疑者Xの献身 (文春文庫)容疑者Xの献身 (文春文庫)
東野 圭吾


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「容疑者Xの献身」で、四色問題に興味を持った方はこちらをどうぞ。
四色問題四色問題
茂木 健一郎


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京都、行ってきました! 

京都旅行から帰ってまいりました。
ようやく疲れもとれたので、旅行記を兼ねて役に立った本の紹介などしていこうかと思います。

今回は、仕事絡みで秋の京都に行くことになったのですが、いろいろ事前に本を読んでいるうちに、今回のテーマは「仏像」ということになりました。
紅葉の名所は、人が多すぎて大変、なんていう事前情報もありましたので・・・。

今回いちばん参考になった本は、「京都、仏像をめぐる旅」でした。
この本を片手に、東寺と三十三間堂、そして平等院の仏像たちに会ってきました。
知識もなくただ見るだけだと、どの仏像も同じに見えてしまうのですが、今回は、いくつかの本で調べてから行ったので、じっくりと特徴を見てくることができました。

京都、仏像をめぐる旅 (集英社be文庫 よC 78)京都、仏像をめぐる旅 (集英社be文庫 よC 78)
吉田 さらさ


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東寺ではイケメン仏像=帝釈天像を、三十三間堂では、二十八部衆、平等院では、雲中供養菩薩と、それぞれ実物を見ることができて、満足しました。そうそう、永観堂の見返り阿弥陀様にもお会いしてきましたよ。正面からだと遠いのですが、横からお顔を間近に見ることができて感激。
平等院では、この本でおすすめの「ウンチュートランプ」(52体の雲中供養菩薩が一枚ずつ載っているトランプ。ジョーカーは鳳凰)もちゃんと買ってきましたよ(笑)

仏像の基礎知識を得るのにおすすめなのは、「仏像、大好き!」。私はこれを最初に読みました。
イラストで描かれた仏像たちに会いたくなってしまうという仏像の魅力を伝える本です。
仏像、大好き!仏像、大好き!
田中 ひろみ


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この本に紹介されている有名な仏像たち。今回見られなかった空也上人像や、弥勒菩薩半跏思惟像や、奈良の仏像たちは、機会があったら会いに行きたいものです。

仏像の旅のきっかけとなったのは、こちら「聖☆おにいさん」。
今夜のBS2「マンガノゲンバ」でも取り上げられるらしいです。
聖☆おにいさん 1 (1) (モーニングKC)聖☆おにいさん 1 (1) (モーニングKC)
中村 光

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最後になりましたが、画像を一個だけ貼っておきます。
仏像はどれも撮影禁止なので、永観堂禅林寺のお庭の池です。(画像はクリックすると大きくなります)
kyouto.jpg

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「ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう」 

「聖☆おにいさん」から始まった(?)仏像への興味ですが、ブログの読者の方から紹介された「ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう」も読んでみました。
モデル出身のはなさんが、仏像への愛情を語る一冊です。
小さいイラストもかわいいし、ローマ字表記もなんだか新鮮です。
仏像にときめく著者の気持ちが伝わってきて、自分も仏像に会いたい気持でいっぱいになりました。

ということで、明日は京都へ出発です。
では、あとは、帰ってきてから、ということで・・・・。

ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう (幻冬舎文庫)ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう (幻冬舎文庫)
はな


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中学で習う歴史 

うちの中学生はもうすぐ期末テスト。
なかなか一人で勉強しようとしない牛くん。
ところどころ教科書やワーク(問題集)を一緒に見てあげている。

歴史の教科書や参考書をみていて、いくつか発見があった。
自分たちが習ったのと、違うのである。

たとえば、
朝鮮半島の国の名前が、いまは二つの読み方を併記している。
新羅は、「しらぎ」と「シルラ」、百済は「くだら」と「ペクチェ」の二つの振り仮名が上下に振ってある。
(「ペクチェ」は、「ペクチュ」と読みちがえて、老眼のせい?と子どもに笑われてしまった)

世界史は、日本とのかかわりに重点を置いているらしく、中国や朝鮮半島の国々は詳しく述べられているが、西洋史は、エジプト文明とメソポタミア文明の次に登場するのは、なんと「ルネッサンス」「宗教改革」だ。
これは驚き。
ギリシア文明やローマ帝国、なんて全く出てこない。
十字軍も・・・。

この子たちが、高校で日本史だけしか履修しなかったら、ヨーロッパ文明は、ルネッサンスから始まるという理解のままになってしまうのかな。
ヨーロッパの歴史って、学ばないままでいいのかな?と思ってしまった。

中学歴史 (チャート式シリーズ)
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数研出版 2002-04
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もっとも私自身は、高校生の時、理系コースは、社会は選択で日本史または世界史のどちらかしか履修できなかった。「ベルサイユのばら」でフランス革命に興味があった私は迷わず世界史を選択。
その後も歴史は特に習わなかったので、自分の日本史に関する知識は、中学生で習ったときのまま。
これでいいのか、と高校レベルの日本史の本を買ってみた。

超速!最新日本史の流れ―原始から大政奉還まで、2時間で流れをつかむ! (大学受験合格請負シリーズ―超速TACTICS)超速!最新日本史の流れ―原始から大政奉還まで、2時間で流れをつかむ! (大学受験合格請負シリーズ―超速TACTICS)
竹内 睦泰


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【絵本】「かき (かがくのとも特製版)」 

柿のおいしい季節ですね。
牛くんは柿が大好き。食べたい時に柿を食べようと、包丁の使い方を覚えました。

「かき (かがくのとも特製版)」は、柿についてのあれこれを紹介した絵本。
おばあちゃんの家から届いた柿には、渋柿も入っていました。
渋柿をかじってしまった女の子の顔と言ったら!

渋柿を甘くする方法がいろいろ紹介されています。
リンゴなどの他の果物といっしょにビニール袋に密閉しておくとか、
冷凍庫に1か月入れて凍らせてしまう、とか。
冷凍庫に入れる方法、試してみましたが、おいしく食べられましたよ。

柿の葉の利用法や、柿を使ったお料理など、いろいろ載っていて楽しい絵本です。

かき (かがくのとも特製版)かき (かがくのとも特製版)
矢間 芳子


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【京都】「京都、仏像をめぐる旅」 

京都への出張に備えて、京都観光の本や仏像の入門書などいろいろ買いましたが、旅行のおともには、この一冊、吉田さらさの「京都、仏像をめぐる旅」を持って行こうと思います。

絵や写真は少ないのですが、仏像について、歴史についての豊富な知識をまじえて書いてあり、とても勉強になりました。
お寺をめぐる順番も、歴史の古い順に並んでいるんですよ。
広隆寺、東寺、平等院、三十三間堂の4つがおすすめなのだそうです。

最後に「愛宕念仏寺」も載っていました。観光ガイドブックにはあまり載っていないのですが、去年京都に行った知人はここがお気に入りなのだそうです。愛宕念仏寺の仏像たちは昭和につくられた新しい仏像だから、最後にのっているのですね、きっと。

お寺だけでなく近くのおいしいお店などが紹介してあるのも嬉しいです。

京都、仏像をめぐる旅 (集英社be文庫 よC 78)京都、仏像をめぐる旅 (集英社be文庫 よC 78)
吉田 さらさ


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【絵本】「くまとやまねこ」 

「ある朝、くまは、ないていました。なかよしのことりが、しんでしまったのです。」

この絵本は、くまの友だちのことりの死で始まります。
くまは、小鳥をきれいな箱に入れ、花びらでかざります。

小鳥のことを忘れられないくま。

くまの哀しみを癒してくれたのは、バイオリンを弾くやまねこでした。

ほとんど黒一色、ところどころ添えられた赤い色が印象的な酒井駒子の絵と、「夏の庭―The Friends」や「ポプラの秋」などの小説で「死」を描き続けてきた湯本香樹実の文章。最高の組み合わせです。

大人向けの絵本ですね。

4309270077くまとやまねこ
酒井 駒子
河出書房新社 2008-04-17

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「とっておき京都」 

「とっておき京都―No.1ハイヤードライバーがこっそり教えます」は、題名の通り、観光タクシーの運転手さん兼ガイドさんが、京都の名所を紹介してくる本。

著者の中村 壽男 さんは、イギリスの語学研修に行き、外国人旅行者(有名人も多数)も案内するプロのタクシードライバーさんです。きっとこういう方に案内してもらったら京都の魅力がもっとよくわかるのでしょうね。語り口がやさしくて、文章も素敵です。

京都ってほんとにたくさんの見所があって、どこに行っていいのやら、迷いに迷ってしまいます。

今度、出張で京都に行くのですが、仕事の方の準備がまだ終わらないため、観光をどうするか、考える余裕がありません。どうしよう・・・。

とっておき京都―No.1ハイヤードライバーがこっそり教えます (祥伝社黄金文庫 な 8-1)とっておき京都―No.1ハイヤードライバーがこっそり教えます (祥伝社黄金文庫 な 8-1)
すげさわ かよ


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【コミック】「JIN(仁) 第13巻」 発売 

いつも買っているコミック「JIN(仁)」の最新刊(第13巻)が出ました。

前半は、長崎での出来事。坂本竜馬、グラバー、高杉晋作などが登場します。
タイムトリップものはやっぱり実在の人物との絡みがおもしろいですね。

ちょっとドキドキしましたが、咲さんとの関係も一歩すすみそうな予感・・・

後半は江戸にもどり、江戸の町につきものの大火とそれをめぐる人間模様も描かれます。

手術シーンは今回はほとんど出てきません。
次号のお楽しみ、というところでしょうか。


いったいどう収拾付けるのだろうと、結末が想像できない展開に、買うのをやめられない作品です。

JIN(仁) 第13巻 (13) (ジャンプコミックスデラックス)JIN(仁) 第13巻 (13) (ジャンプコミックスデラックス)
村上 もとか


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映画「容疑者Xの献身」 

「容疑者Xの献身」観てきました。

よかったです。

いつも映画を観るときに参考にしている★前田有一の超映画批評★で酷評されていたので、どうしようかと思っていたのですが、ヘタレオオカミさん面白かった!と言っていたので、観ることにしました。
この映画の場合、ヘタレオオカミさんを信じて正解でしたね!

ガリレオ=福山雅治はそれほど活躍しないんですね。
むしろ堤真一の演技が光っている映画でした。

原作はこれから読みます。

容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)
東野 圭吾


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「蟹工船」ドラマCD 

あの「蟹工船」がドラマCDになりました。
娘からの情報で、発売直後にAmazonで入手できました。

中村悠一さん、石田彰さんといった人気の声優さんたちが熱演しています。
蟹工船という、海の上での工場での過酷な労働。人間扱いされない労働者たち。
見せしめのために、暴力をふるわれたり、病気になって見捨てられたり・・・。
最後には、団結することで現実を変えることができることに気がつくという明るいエンディングに救われます。

ドラマCDというのは、初めて買いましたが、効果音や音楽なども入っていて、朗読とはまた違った面白さがありますね。

原作では労働者たちの中で特に主人公となる人物は登場してこないのですが、このCDでは、沢木と耕介という2人の人物を登場させています。この二人の造形によって、ドラマCDという形での「蟹工船」は成功したと言ってよいでしょう。

声だけで、「蟹工船」の世界を表現しているのは、さすが、プロの声優さんたちですね!

B001ET6BYU蟹工船
イメージ・アルバム
インディーズ・メーカー 2008-10-23

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未読の方は、こちらもどうぞ。原作本です。
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
小林 多喜二


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「ガン病棟のピーターラビット」 

多作な作家中島梓さんの闘病記。
以前乳がんになったこともある中島梓さんが、今回は黄疸で発症してがんセンターで大手術を受ける。
発症前のことから、診断、入院、手術、その後の闘病、と詳細な記録をもとに、その時感じたことなどを書いている。

中島さんは、膵頭十二指腸切除という、消化器の手術の中でも特に大変な手術を受けられたわけだが、楽天的な見方でつらさを乗り切る様子に、読んでいるほうも励まされる。

表題の「ピーターラビット」は、入院中に旦那さんが買ってきてくれたぬいぐるみ。左手に人参を提げているのがなんとなく、「あずささんがごはん食べられるようになるまで僕もお預けしています」と言っているみたいで、心がなごんだ、とのこと。

一方、「進行がん」という人生の期限が決められてしまう病気と、脳卒中とを比較して、脳の機能が失われることのほうが怖い、と書いている。
小説を書く、という高度に知的な職業をしているだけに、自分が自分でなくなることへの恐怖心が強いのだろう。

「病」によって「死」を感じることにより「生」を見つめなおす。いま、生きていることに「幸せ」を感じる、とあとがきに書いてある。多くの人に、著者のメッセージを読んでほしいなと思った。

ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫 (な1-1))ガン病棟のピーターラビット (ポプラ文庫 (な1-1))
中島 梓


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「買物難民―もうひとつの高齢者問題」 

「豆腐一つ買うのに、バスやタクシーに乗らなければならないなんて……」
近所の商店がなくなり、遠く離れた大型スーパーに行かなければ、日常の必需品も買えない時代になっている。
車を運転できる世代はよいが、車を運転できない高齢者にとっては、近くの商店がなくなることは、死活問題である。
豆腐一つハガキ一枚買うのに、豆腐代の10倍(!)もの料金を払ってタクシーを呼ばなければならない、と70代の女性は涙ぐみながら語ったという。

著者は、数年かけて、クルマ社会下での高齢者の生活実態について全国調査を行い、その結果をもとにこの本「買物難民―もうひとつの高齢者問題」を書いた。
車の保有台数の増加、90年代の規制緩和により、郊外型の大型店が林立し、それに伴い、地元の商店や商店街は衰退していった。
足腰が弱く車を運転しない高齢者にとって、遠方まで歩いて買い物に行き、広い店内で買い物をし、買った物を持ち帰ることは、大仕事である。道路は車優先で、途中で休むベンチや日陰もない。
こんな過酷な状況のままでいいのか、と著者は訴える。

「第5章 買物難民を支える人たち」では、各地での取り組みを紹介している。宅配サービス、送迎サービス、新しい商店を作るなど、いろんな先進的な取り組みがされている地域もある。
自動車学校の送迎バスに高齢者を無料で乗車させる、という愛知県豊田市のアイデアはなかなかよい。

大型店が開店すると地域経済はどうなるか。雇用が促進されるとはいっても、ほとんどが非正規雇用であり、地元の商店が衰退した分の雇用は奪われる。大型店は、儲からなくなったら閉店してしまう。閉店したら、あとには何も残らないことを「焼畑商業」というのだそうだ。

また、商店街が衰退し、唯一身近にあるお店がコンビニという場合も、高齢者のニーズにこたえる品揃えではない、という問題点もある。

著者の提言は、多種にわたるが、その中のいくつかを紹介してみる。
役場の職員はマイカー通勤をやめ、公共交通機関を使うべき(どれだけバスが不便か身をもって知ることができ、バスを利用する高齢者にも触れあえる)、今は車を使える世代も、近所の商店をもっと利用しよう(車が運転できなくなった時、近所の店がなくなっているかもしれない)、バスやタクシー、鉄道はもっと高齢者が利用しやすいようなサービスを取り入れるべき、など。

ふだん車がないと生活できないところに住んでいる者としては、将来のことをいろいろ考えさせられた。「買物難民」を作り出したのは、高齢者を大事にしない政治の責任なのだと思う。

買物難民―もうひとつの高齢者問題買物難民―もうひとつの高齢者問題
杉田 聡


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