「さようなら、オレンジ」岩城けい
岩城けい「さようなら、オレンジ」を読みました。
アフリカから難民としてオーストラリアにたどり着き、息子二人を育てながらスーパーで生鮮食料の加工をして働くサリマ。仕事には慣れても、この国に慣れることができないと、英語学校に通い始める。
自分の研究を中断し夫についてオーストラリアに来た日本人女性サユリ。外国人の名前で出した履歴書は無視され、思い付きでスーパーのパートに応募する。
サリマのことを描いた部分と、サユリがジョーンズ先生という恩師にあてて書いた手紙の部分が交互に登場する。
母国語以外の言葉を、生活のために学ばなければならない彼女たちの「生」。
英語学校で出会った女たち。あることを勉強しにかくれて学校に通う職場の上司である「監督」。
それぞれが関わり合いながら新しい人生を切り開いていく。
言葉について考えさせられ、彼女たちの生き方を通して勇気を分けてもらえる一冊。
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母国語が通じないところで生きていく苦悩を描いた作品としては、アゴタ・クリストフの自伝「文盲」を思い出しました。
アゴタ・クリストフは、ハンガリー人ですが、スイスに亡命し、それから学んだフランス語で「悪童日記」という傑作を書いた小説家。
読書が大好きだった彼女が、亡命先で読むことという最大の楽しみを奪われたことは、どれだけつらかったことか。現地の言葉が話せないために、工場労働者として働きながら、自分の国の言葉を捨て、敵国の言葉を学ばなければならない状況。とてもインパクトの強い作品でした。
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「悪童日記」が世に出た時の衝撃は忘れられません。
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コメント
読みました
牛くんのママさん、お久しぶりです。
薄い本で決して読みづらくもないのに、やたら時間がかかったのは、自分に照らし合わせてあれこれ考えてしまったからかもしれません。
子どもを産み、育てるということ、そして自分の人生について…
ママさんの紹介してくださった本は未読なので、ぜひ読んでみたいです。
なぎさんへ
なぎさん、こんばんは~。
コメントありがとうございます。
「さようなら、オレンジ」なかなか濃い内容の本でした。オーストラリア在住の著者だから書ける部分と、どこに住んでいても女性共通の悩みの両方がえがかれていたのですね。
アゴタ・クリストフはすごい作家です。ぜひお読みください。