「買物難民―もうひとつの高齢者問題」 

「豆腐一つ買うのに、バスやタクシーに乗らなければならないなんて……」
近所の商店がなくなり、遠く離れた大型スーパーに行かなければ、日常の必需品も買えない時代になっている。
車を運転できる世代はよいが、車を運転できない高齢者にとっては、近くの商店がなくなることは、死活問題である。
豆腐一つハガキ一枚買うのに、豆腐代の10倍(!)もの料金を払ってタクシーを呼ばなければならない、と70代の女性は涙ぐみながら語ったという。

著者は、数年かけて、クルマ社会下での高齢者の生活実態について全国調査を行い、その結果をもとにこの本「買物難民―もうひとつの高齢者問題」を書いた。
車の保有台数の増加、90年代の規制緩和により、郊外型の大型店が林立し、それに伴い、地元の商店や商店街は衰退していった。
足腰が弱く車を運転しない高齢者にとって、遠方まで歩いて買い物に行き、広い店内で買い物をし、買った物を持ち帰ることは、大仕事である。道路は車優先で、途中で休むベンチや日陰もない。
こんな過酷な状況のままでいいのか、と著者は訴える。

「第5章 買物難民を支える人たち」では、各地での取り組みを紹介している。宅配サービス、送迎サービス、新しい商店を作るなど、いろんな先進的な取り組みがされている地域もある。
自動車学校の送迎バスに高齢者を無料で乗車させる、という愛知県豊田市のアイデアはなかなかよい。

大型店が開店すると地域経済はどうなるか。雇用が促進されるとはいっても、ほとんどが非正規雇用であり、地元の商店が衰退した分の雇用は奪われる。大型店は、儲からなくなったら閉店してしまう。閉店したら、あとには何も残らないことを「焼畑商業」というのだそうだ。

また、商店街が衰退し、唯一身近にあるお店がコンビニという場合も、高齢者のニーズにこたえる品揃えではない、という問題点もある。

著者の提言は、多種にわたるが、その中のいくつかを紹介してみる。
役場の職員はマイカー通勤をやめ、公共交通機関を使うべき(どれだけバスが不便か身をもって知ることができ、バスを利用する高齢者にも触れあえる)、今は車を使える世代も、近所の商店をもっと利用しよう(車が運転できなくなった時、近所の店がなくなっているかもしれない)、バスやタクシー、鉄道はもっと高齢者が利用しやすいようなサービスを取り入れるべき、など。

ふだん車がないと生活できないところに住んでいる者としては、将来のことをいろいろ考えさせられた。「買物難民」を作り出したのは、高齢者を大事にしない政治の責任なのだと思う。

買物難民―もうひとつの高齢者問題買物難民―もうひとつの高齢者問題
杉田 聡


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コメント

買物難民・・・

切実だなあ、と拝見しました。
わがやのまわりも そんなふうに変化して・・・かといって、足回りに優しいか?というと、バリアフリーも今ひとつ。ディケアで 海岸を お散歩いただくのも難しいらしくて・・・
>高齢者を大事にしない政治の責任
なのでしょうねえ。モンダイが山積みです・・・

うだきちさん、コメントありがとうございます。

この本の中でも、外出できなくなってしまった高齢者は、政治に参加する機会も失われてしまい、自分たちが不便だということを議員に伝えることもできなくなっているのではないか、というようなことが述べられていました。
今は、自分に関係ないことでも、声を上げていくことは大事なのかもしれません。

うだきちさんの図書館に関する取り組み、いつもすごいなあと思いながら読ませてもらっています!

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  • [2008/11/03 18:40]
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