「トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録」 

「トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録」は、占領軍としてやってきた米従軍カメラマンジョー・オダネル氏が、私用のカメラで残した写真による写真集。

被爆直後の広島、長崎の空からの写真は、当時の日本人には撮ることができないので、貴重なものだ。
爆心地の広い廃墟。
歩き回っていて一番辛かったのは、生き物の存在があたりにまるで感じられないことだったという。

ジープでは瓦礫におおわれた道を進めないため、途中からは馬を買い、馬とともにどこへでも撮影に向かった。
帰国後には、残留放射能による健康被害にも苦しんだという。

たくさんの写真を、あまりに辛い記憶に半世紀の間、トランクの中に封印していたが、どうしても忘れられずに、世の中に出したのがこの写真集。
写真に添えられた文章も味わい深い。

日本や各国で、写真展を開催したそうだがアメリカでは、在郷軍人の反対のため、写真展を開けなかったという。
なぜアメリカ人は写真展に反対したのだろう。
こんなに残酷なことを自分たちが行った、ということを国民に知らせたくなかったからだろうか・・・。

トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録
Joe O’Donnell


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「スタバではグランデを買え! 」はどんなものか? 

吉本 佳生「スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学」を読む。
部分的には、面白かった。100円ショップが安いのは、中国産のものを扱っているからだけでなく、日本産のものもあるが、それはなぜか、とか、新しい店を出すなら、競合店の近くのほうがよい、など、面白いところもあった。

しかし、「子供の医療費の無料化は、本当に子育て支援になるか?」の章は、違うのではないかと感じた。
筆者の論理は、子供の医療費が無料化により病院が混雑し、待ち時間が増えることにより、働く母親にとっては経済的デメリットが生じる、というもの。
実際にはどうなのだろうと、小児科医に聞いてみた。
病院に勤める小児科の医師たちの話によると、
「そんなことはない。今は、経済的な問題で、病院に来るべきなのに、受診できないでいる患者が多い。たとえ、医療費が無料になったとしても、子どもを連れての外出は大変だし、病院に行って他の病気を移されても困るし、交通費だってバカにならないので、無駄な受診はそれほど増えないと思う。病気をする子は、しょっちゅう病気をするので、なおさら負担が大きい。乳幼児医療は無料にするほうが、子どものためである。」
とのことだった。
この本は、題名のつけ方がうまく、ベストセラーになっているが、この乳幼児医療費無料化批判のところは、うのみにしてほしくないと感じた。

スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
吉本 佳生


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【ノンフィクション】「新薬、ください!―ドラッグラグと命の狭間で」 

『ドラッグラグ』とは、海外ではふつうに承認され使われている薬が、日本国内では、厚労省による販売の認可が下りないために、使用できない状態のこと。
「新薬、ください!―ドラッグラグと命の狭間で」では、『ムコ多糖症』という非常に稀な難病の治療薬が、日本ではなかなか認可が下りず使用できない問題を取り上げている。
『ムコ多糖症』の患者は、国内に300人ととても少ない。海外で認可された薬が国内で使用できるようになるためには、通常、日本国内での治験(薬が安全に使用できるかどうかの試験)を行わなければならない。しかし、患者さんの数が少なすぎることにより、国内での治験が難しい。製薬会社側も、売り上げが期待できないことから、積極的になれない。
そうした状況の中、治療できずに病状が進行し、幼い命が失われていくことに我慢できないと、患者さんの家族を中心に声をあげはじめた。
テレビ局も患者さんの人数の少なさに、始めはドキュメンタリーとして番組で取り上げることにも難渋したという。

渡米して治験に参加した患児と家族の苦労。
ドキュメンタリー番組を見て、「ムコ多糖症」のことを知り、応援を始めた音楽アーティスト。彼らは、売名行為ではないかという誹謗中傷にもめげずに、応援しつづけている。
いろいろな活動を通じて、ムコ多糖症の患者さんへの支援の輪が広がり、この本が9月に出版されたあとの、2007年10月にようやく、「ムコ多糖症2型」の治療薬が、認可された。
通常の新薬が認可されるより、はるかに早く。

「卵巣がん体験者の会・スマイリー」代表の片木さんは、こう語っている(本書p79)。
>「病気になってからでは遅いんです。ガンになってから活動を始めるのは、並大抵のことではありません。本当は、今、健康な人たちにこそ『ドラッグラグ』の問題に取り組んで欲しいですね。より良い医療って何なのか、健康なうちから考えていかないといけないと思います」

バイアグラのような、生命維持に関わらない薬はスピード認可されたのに、抗がん剤や、ムコ多糖症の薬のように、命に関わる薬がなかなか認可されない仕組み、おかしいと思う。

新薬、ください!―ドラッグラグと命の狭間で新薬、ください!―ドラッグラグと命の狭間で
湯浅 次郎


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【ノンフィクション】『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』 

『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』は、「本読め 東雲(しののめ) 読書の日々」や「シンさんの偽哲学の小部屋」でとりあげられて以来、ずっと気になっていた本。ようやく読むことができた。

「教師によるいじめ」「体罰教師」「血が混じっているなどの差別発言」などは、事件当時マスコミで騒がれ、記事を読んだときには、えっ?そんなことがあるの?と驚いたことを覚えている。しかし、この本を読むと、報道とは全く違う事実が明らかになり、衝撃的である。

保護者側からの訴えにより、マスコミが一教師を糾弾し、児童はPTSDと認定され、裁判では原告側(訴えた親の側)に550人もの弁護団がつくが、教師の側には一人の弁護人もついてくれなかった。
しかし、裁判や、この本の取材の中で徐々に真実が明らかになってゆく。親の言っていることが矛盾だらけであることに誰もが気づくのだ。

裁判のときの陳述書での川上氏の文章(本書208ページより)
>今の学校、残念ながら、担任と保護者の関係では、担任の方がものが言えません。その意味では、学校は特殊な社会かも知れません。
>もし裁判までなるということがわかっていれば、あるいはマスコミに殺人教師とまで言われ誹謗中傷されるとわかっていたら、けっして事実に妥協することはありませんでした。してもいないことを認めもしませんし、謝罪もしませんでした。

彼は、校長がこの事件をまるくおさめようとしたために、保護者の言い分を認め謝罪してしまったことを反省しているのだ。ところが意図に反し、校内でとどまらずマスコミに騒がれ、裁判にまでなってしまう。
冤罪事件は、どこも同じようなところから始まるのだなと思った。

マスコミによる報道は、一方的であったり、事実と異なっている場合があることに、あらためて注意を喚起させる貴重な1冊。

でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相
福田 ますみ


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【ノンフィクション】「ぼくには数字が風景に見える」 

「ぼくには数字が風景に見える」は、語学と数学の天才、共感覚の持ち主のダニエル・タメットの手記。ダニエルは、サヴァン症候群とアスペルガー症候群という障害を持ち、人とのコミュニケーションや、周りの状況への適応に大きな困難を持つ。
小さい頃から、周りとは違う、と孤独な生き方をして来たが、リトアニアで英語を教えるという海外でのボランティアの経験を通し、成長してゆく。外国人として暮らすことにより、周りから違う人間として見られて当然、という環境の中でかえってのびのびと過ごすことができたようだ。

タイトルの「ぼくには数字が風景に見える」というのは、共感覚により数字に形や色を感じる、ということから来ている。原題は「Born on a Blue Day」。生年月日が青い色をしているので、水曜日だということがわかるのだという。

共感覚というのは、とても不思議で、興味深い。ダニエルにとっての数字の形は、計算をするのにとても役立つのだそうだ。また、π(円周率)を暗記して新記録を出すというイベントで、同じ病気(てんかん)の人たちのための寄付金集めも行なった。

アスペルガー症候群のために人付き合いが困難なダニエル。苦労してきただけあって、この本の文章からは優しさがにじみ出ている。本のカバー裏の写真も、とても素敵な笑顔だ。

ぼくには数字が風景に見えるぼくには数字が風景に見える
D. タメット 古屋 美登里


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